ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
少し考えた後、私は口を開いた。
「ふふ、なんでだろうね?」
私はいたずらっこい笑みを浮かべ、リュックサックから教材を取り出し始める。
杏月はそんな私に「ええー、理由教えてくれないの~?」と残念そうにしていた。
「それよりも。杏月さ、滝口くんとのデート、どうだったの?」
「でっ、デートって! 違うし……」
杏月が頬を赤らめて言う。
長い髪の先をくるくると指に巻きながら恥ずかしそうにする杏月は最高にかわいい。
これまでの経緯を説明すると、滝口くんにデート(遊び)に誘われた杏月は今絶賛滝口くんに気があるというわけだ。
「それでそれで、どうだったの?」
「どうだったって、……まあ楽しかったよ。普段陰キャなのに私服はおしゃれだし、よく見てみたら顔も整ってるし」
ぽつぽつと話し始める杏月は恋する乙女のようで私は思わずニマニマしてしまう。
「って、ゆいこそどうなのよ……! 犬飼くんと一体何があったわけ?」
そっか、そういえば杏月にはまだ話していなかったんだ。
私たちが夏休み前に同居を解消した後のこと。
クラスに誰もいないことを確認して、私はこれまでの経緯を簡単に話した。
同居を再開したこと、お兄ちゃんがいたこと、お兄ちゃんと犬飼くんに繋がりがあったこと。