ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


「いつもいつも犬飼くんを苦しめて、一体何がしたいわけ? 今のあなたたちを見て、お兄ちゃんがどう思うかとか考えないの?」


私の言葉に、銀髪野郎、冬樹という奴の瞳が揺らぐのが見えた。


「ゆい、……」


後ろから犬飼くんの弱々しい声が聞こえる。

私は振り返って犬飼くんの手をとり、ギュッと握りしめた。


「もう犬飼くんを傷つけるのはやめて」


そう力強く言い放つ。

冬樹さんはだんまりを貫いていたけれど、わずかに口を開いた。


「……なんでお前の言うことに従わなくちゃなんねえの?」


「私も訊くけど、弟を傷つけてそんなに楽しい?」


〝弟〟

そのワードに、冬樹さんが明らかに動揺した。


犬飼くんから伝えてもらったこと。

それは、犬飼くんを今もずっと傷つけている人が実の兄、冬樹さんだということ。


「……っ」


私の隣で犬飼くんが息を呑むのが分かった。

私はその手をさらに強く握りしめる。


一人じゃないよ、と犬飼くんに伝わるように。


「冬樹さん。もうこんなこと、やめましょうよ。だって、かっこわるいじゃない」


私は哀れみを含んだ目で冬樹さんを射抜いた。

私と冬樹さんの間に冷たい風が吹く。

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