ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「忘れてた、じゃないわよ馬鹿っ!」
私は思い切り叫んで銀杏形に切った人参を犬飼くんに投げつけた。
「ちょ、危っぶねえ。何も食べ物を粗末にすることないだろ」
生意気にも人参をキャッチした犬飼くんは、私に近づいてまな板の上にそれを置いた。
「……ふん」
私は真顔でまた彼のスネを蹴り飛ばした。本日二度目の犬飼くんの叫び声は、近所周辺にまで響き渡っていたという。
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「いただきます」
二人同時に手を合わせ、ほかほかと湯気が立っているカレーにスプーンをつけた。犬飼くんは目をキラキラさせながら一口パクッと口に含む。
私は少し緊張して犬飼くんの反応を待つ。
「んー! 美味い何これ天才!! 雨宮さん、俺こんなに美味しいカレー生まれて初めて!」
少し大袈裟すぎないかと思うくらい犬飼くんはオーバーリアクションで私を見た。興奮のせいか色白の頬がほんのりとピンクに染まっている。
「そ、そう? なら良かった」
柄にもなく照れてしまった私は、唇を噛んで彼から視線を外す。