ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


「え、何。服がってこと?」

「そ」

「えー嬉しいなあ。俺、白似合うんだね~」


少しかまってあげただけでこんなにご機嫌なんだもん。単純なのと面倒くさいのが混じって呆れちゃう。


ドライヤーのケーブルをコンセントに差して、スイッチにつけようとした。だけど犬飼くんの手に阻まれる。


触れた部分がほんのりと熱を持って、私は犬飼くんを睨んだ。


「何。私今から髪乾かすの」

「うん、知ってる。ねね、雨宮さんの髪俺が乾かしてもい?」

「……は?」

「まあまあ、そう照れずにさ~」


私からの返事も聞かずにドライヤーを奪い取った犬飼くんは、ソファに移ってスイッチを入れた。すぐ後ろから温かい風が送られてくる。成す術もなく、私は諦めて大人しく前を向いた。


犬飼くんの大きな手が私の髪に触れる。緊張で体が硬直して、頭の中は真っ白だ。


誰かに髪を乾かしてもらうなんて久しぶりすぎて、その心地よさに思わず目を細めた。

割れ物を扱うように優しく触れてくる感覚。これは前にも体験したことのある感覚。

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