ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「雨宮さん……。昨日の夜のこと覚えてる?」
犬飼くんに遠慮気味に訊かれた。
……昨日の夜? は大変だったよ。誰かさんのせいで怒涛の放課後を送って、髪まで乾かされて、それから。
それから……何したんだっけ?
犬飼くんに髪を乾かしてもらってからの記憶が一切ない。
「え、私、覚えてない……」
どうしてだろう、なんでだろう。私、変なことしてないよね?
「やっぱりそうか。雨宮さん、昨日気失ったんだよ」
「え?」
犬飼くんの言葉が信じ難くて、私は訊き返した。
「髪乾かしてたら、急に。俺びっくりして、何していいか分かんなくて……何もできなかった」
悔しそうに唇を噛む犬飼くん。私はベッドから起き上がって、まっすぐに彼を見つめた。
すべてを思い出した私は一度深呼吸をして、口を開いた。
「犬飼くんは何も悪くない。……気を失ったのは、私の弱さが原因だから」
そこまで言ってはっとした。いらんことを言った。