ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
犬飼くんはふざけたような笑みを浮かべてそう言った。
「……かの有名な、雨宮さん? は、え!!!??」
復唱して、私は周囲に響き渡るくらい大きな声を出してしまった。
途端に犬飼くんの大きな手によって口を塞がれて、んーんーと唸る私。
すぐ近くから「きゃっ♡」という黄色い悲鳴が次々に聞こえてきて、私は慌ててその手を引き剥がした。
「ちょ、何すんのよっ。気安く触らないで。それに人だっていっぱいいるんだよ!」
怒っても犬飼くんには響いてなさそう。
「えーいいじゃん」
「よくないの! それより私、もう大丈夫だから先に行くね!」
そう言い捨てて私は遠くに見えている校門に向かって駆け出した。
後ろから私を呼び止める犬飼くんの声がしたけれど、気にせず走り続けた。