ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
隠したい秘密
教室に入ると、ある一人の女の子が飛びついてきた。勢い余って二人して床に尻もちをつく。
「あいたっ」
すぐ近くで聞こえてきた声に小さくため息をこぼした。
「もう、杏月。いつも言ってるでしょ、急に飛びかかってこないでって」
「ち、違うもん! 私は抱きついてるつもりなの!」
「あーはいはい」
ぷくぅっと頬を膨らまして拗ねる杏月を適当にあしらって立ち上がった。
学生カバンを自分の席に置く。今月のくじ引きで見事一番前の席を引いてしまった悲しみはまだ消えることを知らない。
「おはーゆい」
「あ、おはよう美羽ちゃん」
「ゆいおはよーっ。今日もずば抜けて可愛いねぇっ」
「おはよー愛紗ちゃん。えぇ、やだなあ。お世辞はいいよ」
そう言う私のほっぺたを愛紗ちゃんがむぎゅーっと両手で挟み込む。
「この無自覚美少女めっ!」
わけの分からない捨てゼリフを言って、愛紗ちゃんは自分の席に行ってしまった。
「他人行儀」
すぐ横で聞こえてきた杏月の言葉にぎょっとする。