ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
はわわぁ♡……って、アニメじゃないんだから。
視線を向けた先には、無数の女の子たちが群がるその中心に、目を奪われるほど一際綺麗に艶めく黒髪頭があった。
それが誰かなんて遠目でもすぐに分かってしまう。けれど、数日前の私ならそれが誰かなんて検討もつかなかった相手。
───だけど。
その人をひと目見て、胸に湧き上がった違和感。
周りの人たちはみんな笑顔で、その中心にいる人だけが怖いくらい真顔なんだ。
私の知ってる犬飼くんは常に元気でうるさいくらいで、笑顔の耐えない明るい子なのに。
昨日知り合ったばかりなのにどんな立場でそんなことが言えるんだ、と言われるかもしれないけれど、少なくとも犬飼くんは無愛想な人じゃなかったはずだ。
それは一夜を共に過ごしてよく分かったこと。
それなのに、今の犬飼くんは本当に別人のように見える。
見つめすぎていたら、犬飼くんとバチッと視線が交わって、私はすぐに目を逸らした。
「ゆいっ! あれ、犬飼くんじゃない!? きゃっ、今私たちの方向いたよね、絶対ゆいのこと見てんじゃーん」
「そ、そんなことないでしょ」
昨夜犬飼くんを家に泊めたことを打ち明けた途端、これだ。