ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
言うつもりなんてなかったけれど、それでも言ったのは杏月に嘘をついたってどうせ見抜かれると分かっていたからだ。
それに、私が杏月に心を開いてないって言われちゃったしね……。
「ゆい、話しかけてきたら?」
「は、何言ってんの。早く行くよ」
私は杏月の腕を掴んで人混みをかき分け、食券機の前まで行った。
こんな所で群がる常識のない奴ら、お腹がペコペコという状況に私のイライラは収まらない。
「ゆいは何食べるのー?」
「チキン南蛮」
「わお男らしい!」
「……」
杏月の中では、チキン南蛮を頼む=男らしいそうだ。
食に男らしいも女らしいもないと思うんだけど、価値観は人それぞれだよね。
反応に困った私はそのまま無視してチキン南蛮の食券を買った。
「いただきます!」
「いただきます」
二人同時に手を合わせ、その言葉を口にした。