ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
私はすぐに紙切れをぐしゃりと握り潰す。心は明らかに動揺している。
弾かれたように足が動き、私は足早に犬飼くんに指定された場所に向かった。
❥❥❥
理科準備室の扉をそっと開けて中に入る。
犬飼くんはもう来てるんだよね……?
そう思い、もう一歩踏み出した時、カーテンが風に吹かれ、宙にふわっと舞った。
カーテンが元の位置にゆっくりと戻っていく様子が、まるでスローモーションのように見えた。
その先に、憂いを帯びた表情の犬飼くんがいた。
「……っ」
違和感。
その人の顔を捉えた瞬間、また感じたその感情。
感情を失った真っ暗な瞳は、ぼんやりと外の景色を眺めているが、何も映していないようにも見える。