ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
笑み一つ浮かべずに静かな表情で佇む彼に、私は今まで違和感を感じていた。
「犬飼、くん……?」
私は訝しげに眉をしかめて、未だにこっちを見ようとしない彼に近づく。
私が近づいてきていることに気づいたのか、犬飼くんは視線だけをこちらに向けた。
ハッとした表情をしたかと思えば今朝と同じ人懐っこい明るい笑顔を浮かべていて、犬飼くんに対する疑問はどんどん大きくなっていく。
まるで無理やり貼り付けたような笑顔に既視感を感じた。
……これは、私がいつものように浮かべている笑顔だ。いや、愛想笑いと言った方がいいか。
「雨宮さん、」
「……私をここに呼んだ理由は何?」
私は愛想ゼロの態度で切り出した。
「それは、うん、そうだな」
「答えになってないんだけど」
私は腕を組んで犬飼くんを見上げた。睨みを利かせると、わざと臭い笑顔が消えた。
「……実は、雨宮さんにお願いしたいことがあるんだ」