ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「俺の目を見て」
私の目線に合わせるようにしゃがむもんだから、劣等感が半端ない。だけどここから早く去りたい一心で、言われた通り犬飼くんの目を見た。
どこまでも透き通る硝子玉のような瞳に吸い寄せられる。
いつ見ても綺麗な目。逸らすことは許されず、ただ見つめ続けた。
しばらくして、犬飼くんの方から目を逸らした。私はようやく現実に戻ってきた、という不思議な気持ちを抱く。
「ありがと、引き止めてごめん。もう用は済んだから、行っていいよ」
「……う、ん」
イマイチ気分がぱっとしないまま扉を開け、廊下に出る。
扉を閉めようとした時、ちらりと見えた犬飼くんの横顔。
何かに耐えるように怖い顔をして、静かに佇んでいた。