ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


私は見なかったフリをして扉を閉め、心を落ち着かせながら教室に戻った。


 ───


「……っ、くそ」


握った拳で強く膝を殴り、床に膝を打ち付ける。

形の良い唇はふるふると震えていて、顔色は物凄く悪い。


その場にうずくまったまま、動こうとしない。


「……っう、うぅ」


理科準備室に悲痛な唸り声が響く。

ただ一人、真っ暗闇に取り残されて声を抑えて泣いている。


それがどんなに胸をえぐることか、みんなは知らない。

普段は周りからちやほやされている学校一のモテ男子が、裏ではこんなにも苦しんでいるということを。

それは家族にも言えない、苦しいくるしい秘密。

< 39 / 150 >

この作品をシェア

pagetop