ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
私は杏月に怨念を放つのをやめて、凛大の腕をベリッと引き剥がして離れさせる。
……でも、そんな風に怒っている割に私は久しぶりに感じる温かい体温に、少し嬉しくも思った。本当に私は、素直じゃない。
「もぉー、酷いなぁゆいは。でもそんな冷たいところも好きぃ」
「あーー…、はいはい」
再び私の背中に抱きついてお決まりの言葉を放ち、甘えるように頬を擦り寄せてきた凛大を、もう一度容赦なくベリッと引き剥がす。
……凛大め、本当に懲りない奴。何度も繰り返すこの行動が凄く面倒くさくて、辟易とする。
ちょっとした突然の出来事(凛大が抱きついてくるという事態)のせいで紹介が遅れたけれど、この子犬みたいに人懐っこい奴は私の長年の幼なじみ。
そしてさっき私が「帰ってきたと思ったら」と凛大に言ったんだけどその意味はーーー、
「凛大、今シーズンも大活躍だったね。水泳競技大会、全国一位おめでとう」
日本高等学校選手権水泳競技大会、自由形100m、フリーリレー、バタフライ200mと登録した種目全部で最高記録を叩き出した今シーズンの全国一位を掻っ攫った男。
その名も二宮 凛大。