ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
杏月はもごもごと喋る。手を離し、「静かに喋ってね」と言った後に、私は事の詳細を話し始めた。
「まあ、犬飼くんに強引に押し切られて。あまりに諦めの悪いものだから、嫌嫌行ったの」
「へえ〜、あのゆいがねぇ。しかも、カップルが行くような場所に付き合ってもない犬飼くんと」
杏月はにやにやとした顔で私を見つめる。
「仕方ないでしょ」
「ふ〜ん。てかさ、私ずっと気になってたんだけどさ。人と仲良くなることを避けるゆいがどうして犬飼くんを一週間以上も家に泊めてるのかな〜って」
私の返事をわくわくとした様子で待つ杏月に、私は犬飼くんと出会ってから二日目の日のことを思い出した。
「それは──」
それは、スーパーの袋を提げてマンションに帰ってきた放課後のことだった。
オートロック式のマンションのすぐ側の段差の上に人が座っていた。
一体誰なんだろうと何気なく視線を向けた先には、まさかの人物がいて驚いた。
「え……、犬飼くん?」
「あ、雨宮さん」
「どうしてここにいるの?」