君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 たったそれだけのことなのに、俺の胸はかすかな熱を覚え、まるで恋を初めて知った若者のように疼いてしまう。

 そして、彼女そのものが俺のすぐそばにいるという事実が、落ち着かない胸をさらに騒ぎ立てる。

「今日も忙しかったんですね。毎日遅くまでご苦労様です」

 そう気づかわしげに微笑む彼女は、今はゆったりとした淡い桃色のワンピースを着ていた。
 俺と一緒に行って買った物の中の一着だった。

 あの時購入した服や小物を、彼女は上手に着まわしている。

 出会った頃に来ていた服は清楚で愛らしかったが、少し地味で幼い印象を与えた。
 その点、スタイリストの安田さんが選んでくれた服は、大人びたデザインながらも、優しい色合いやゆったりとした生地が純真な彼女に合っていた。
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