君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「でも余計なお世話かもしれませんけど、栄養は気にされてくださいね。結局は事故で亡くなってしまいましたけれど、うちの両親は自営で忙しかったけど食生活だけはちゃんとしてたんです。その甲斐あってか、いつも元気でしたから」

 俺の身体を気遣うやさしさに、つい胸が温かくなる。

 考えてみれば、俺になにかあれば彼女はまた家族を失って独りになってしまう。
 だから俺の不規則な生活が心配なのかもしれないな……などと思ってつい別の罪悪感に胸を締め付けられる自分を叱咤し、冷ややかな口調を続ける。

「気遣いはありがたいが、食事の準備はしなくていい。以前も言ったはずだが?」
「もちろん、覚えていますよ」

 やや責めるような口調にしたが、美良は明るい調子でやんわりと返す。
 むきになって俺はさらに口調を強めた。

「いつも言っているが、君が妻の務めをやる必要はないんだ。俺は君を束縛してしまった。だからその見返りに、君は好きなようにやっていいんだ」
「はい、だから好きにやっているんです」

 あっけらかんと返して、美良は俺を真っ直ぐに見つめた。
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