君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜



 それから数日経った。

 今夜は遅くに帰宅した。
 特別、用事があったわけではない。早めに帰れたが、美良と二人きりになりたくなかった。

 結局、食事についての連絡はきちんとするようにした。
 彼女は食事を余計に作るくらいで怒る女性ではないのだ。

 美良に嫌われることが難しいなら、もういっそ接点を少なくしていくしかなかった。

 リビングからは灯りが漏れていた。
 まだ起きているのか、と扉を開けると、美良はソファで眠っていた。

 背もたれに身体を預けたままで、膝にはテキストが乗り、力尽きたように投げ出された手からはペンが零れている。

 起こしてきちんとベッドに眠らせようとかと迷っていると、ふとパンのいい香りがすることに気付いた。

 ダイニングテーブルを見やると、バスケットにベーグルが入っていて、そばにメモがあった。

 『レンジでチンすれば美味しいですよ。これも自信作!』

 メモを置いたものの、直接俺に伝えたいと思って待っていたのだろう。

 胸が痛む。
 罪悪感と、たまらなく愛おしいと思う、甘い疼き――。
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