君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 微かに身動ぎする音が聞こえて振り向くと、美良がソファに横になって寝息を立てていた。
 体勢が変わっても一向に目を覚まさない。疲れているのだろう。

 少し口が開いているあどけない寝顔に、思わず口元が緩む。

 このままでは身体が冷えてしまう。
 起こすのもかわいそうだ。このままベッドまで運んでやろう。

 羽織っていたスーツの上着を脱いで美良にかけてやり、そっと抱き上げた。

 腕全体に伝わってくる彼女のぬくもり。
 軽いながらも、しっかりと感じる重み。

 手に入れた、愛おしい存在。

 俺は、いったいなにをやっているのだろう。
 そばにいて欲しくて束縛した。
 なのに距離を取りたいと、必死になっているなんて。

 いっそ別れてしまった方がいいのでは、とも思ったが、それだけは嫌だった。

 距離をあけて、束縛しておきたい?

 わがままどころでない。愚かだ。

 俺の喜ぶ顔を見るのが見返り――美良はそうとまで言ってくれた。

 そんな美しい心を持つ彼女に報いるものが、愛以外になにがあるのだろう。

 許されるのなら、彼女が溺れるくらいに愛をそそぐのに――。
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