君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
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「ひさしぶりだな」
ダイニングバーの片隅で一年ぶりに見る男の顔は、懐かしむというより面白がっているというような様子で、にやついていた。
「いやぁ、結婚おめでとう。いやぁ驚いたよ、おまえが結婚とはな」
俺が挨拶を返す前に矢継ぎ早に続けるその声は、愉快でたまらなそうに上擦っていた。
俺は不快感を露骨に滲ませた顔をしながら、どかりと男の前に座った。
「相変わらずのその軽い顔からは祝福の意が感じられないな。絶対面白がってるだろ」
「まさか!」
男は両腕を広げて大げさにかぶりを振った。
「親友の祝い事を面白がるヤツがどこにいる。もう自分のことのように嬉しくて笑みが抑えられないんだよ」
と、アメリカ仕込みのオーバーアクションを交えながら破顔する。