君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「なら適当なものを持ってくる。まずは水分をちゃんと取らないとだめだ。薬は飲んだのか?」 
「いえ、まだ……」
「市販のものでもいいから解熱剤を飲んだ方がいい。熱が高すぎる。その前に一度なにか胃に入れたほうがいいな……」

 と踵を返した俺の袖を、美良が弱々しい手でつかんだ。

「大丈夫です聡一朗さん。それくらい自分でできますから。それより、お仕事とかがあったら、そちらを優先――」
「君以外に優先するものなんてない」

 つい声を荒げてしまった自分にはっとなる。

 彼女は顔を強張らせて目を伏せてしまった。

 俺はなにをしている……まずは自分が落ち着かなければ。
< 125 / 243 >

この作品をシェア

pagetop