君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 軽く息を吐くと、俺は跪いて彼女の熱い手を握った。

「すまない……。だが、こんな時まで無理をしないでくれ」
「すみません……」

 美良は申し訳なさそうに頭を下げ、俺を見つめた。
 その瞳が潤んでいるのは熱でぼうとしているためもあるだろうが、忙しい俺に厄介をかけさせてしまったと涙を溜めているからにも見えた。

 こんな時まで俺を気遣ってくれるのか――。
 むしろ俺の胸の方が痛んでくる。

 もっと無防備に俺を頼ってくれていいのに。

 なんのために結婚したと思っているんだ。
 彼女に心細い思いなどさせたくないのに……。
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