君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「もっと食べなさい」
「はい」

 食事を与えてもらう小鳥のように、美良はいたいけにゼリーを頬張る。

 時折気恥ずかしそうに微笑む様子から見ると、体調はともかく、元気そうだ。

 甲斐甲斐しく尽くしている方だというのに、不思議と俺の胸には温かく優しい気持ちが芽生えていた。

 『相手が喜ぶ顔を見ると嬉しくなりませんか?』

 美良の言葉が思い出された。

 君も、俺にこういう気持ちを抱いてくれていたんだな。

 そう実感すると、不意に愛おしい気持ちが溢れてくる。

 美良を抱き締めたかった。
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