君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 性的な衝動ではない。
 守るように、抱き包みたかった。

 そしてそんな想いを感じることに、幸福を覚える。

 美良はその後、解熱剤を飲み横になると、すぐに眠ってしまった。

 まだ熱はあって寝息は苦しそうだが、よく眠っている。
 そのあどけない寝顔を見守りながら、俺はそっと彼女の頭を撫でた。

 おそらく、結婚、通学と新しい生活が始まり、そこに勉強や俺への気遣いと無理がたたって、知らず体力が落ちていたのだろう。

 美良は……この生活をどう思っているのだろう。

 断言できるのは、けして楽しいだけではないということだ。

 夢だった勉学と大学生活は叶ったが、その代わりに彼女は愛していない男と結婚し、気遣うばかりの堅苦しい結婚生活を送っている……。

 はっとなり、俺は急に頭を撫でる手を止めた。

 俺はあの男と同じじゃないのか――。
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