君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
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「これは有名な作家だね。俺も知っているよ」
「本当ですか? じゃあこの作家も?」
絵本を手に取りうなずく聡一朗さんに私は感激する。
絵本作家は認知度が低いのに、さすが大学教授さんって博識なんだな。
今、私と聡一朗さんは大学の図書館に来ていた。今週借りていただく本を探すためだ。
あれから絵本をお返しに伺うと「今度は自分で好きなものを選ぶといい」と図書館に連れて行ってもらい、それが毎週になって習慣化していた。
「ああ、これはストーリーも知っているよ。兎が亀に負ける話だろう?」
「ふふふ違います。狐ですよ。それじゃあ日本昔話です」
「そうだったな」
と、聡一朗さんの目尻が下がる。
笑ったと言っていいほどではないけれど、聡一朗さんの表情は最初の頃よりずっと柔らかくなったと感じる。
こうして会う回数を重ねて気付いたことがある。