君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 身体中にキスを施されたけれども、特に背中は丹念で多かった。

『今夜のドレスは反則だ。ずっと脱がせたくて、堪らなかった』

 快感で頭が一杯でうろ覚えだけれど、聡一朗さんはたしかそう言った気がする。
 そしてキスを繰り返して、私からドレスを脱がせていった。

 その背中が、今も優しい手つきで愛撫されている。

 胸がきゅっと苦しくなって、私はその逞しい胸に額をすり寄せた。

 間もなく終わるだろう、この幸せな時間を名残惜しむように。

 そんな私を包み込むように腕に力を入れると、聡一朗さんは独り言ちるように囁いた。

「これが夢なら、醒めないで欲しいな」

 息が止まる。
 私は涙を堪えながら聡一朗さんを見上げた。

 聡一朗さんは、いつもの冷静な顔に微かな陰りを宿して続けた。
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