君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 聡一朗さんの大切な唯一の肉親なのに、お会いすることが叶わなかったのがとても残念だった。

 そもそも、私は亡くなったという事実以外お姉さんのことをなにも知らない。

 何年前に亡くなったのかも、お墓がどこなのかも。
 許されるなら、いつかお墓に手を合わせに行きたいな……。

 と考えて、はっとなる。

 そうだそれに、お姉さんはたしか結婚していたと聞いた。

 なら今そのご家族との交流はどうなっているのだろう。ご主人は? お子さんはいたのか――。

 どこか腫物のような存在に感じていたから、無意識にお姉さんのことはあれこれ考えてはいけないと思っていたけれども――結婚してたった数か月とはいえ、お姉さんのご遺族と、一度も接点を持ったことがない。

 そうだ。
 いまさらだけれども、結婚した時に挨拶することもなかった。

 籍に入ればお姉さんのご遺族とも親族になるのだろうから、挨拶ぐらいするのが筋だ、というのは子どもの私でも想像がつく。

 いったい、聡一朗さんとお姉さんのご遺族との関係は、どうなっているのだろう――。

 ピンポン。
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