君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
そんな私の様子に気付いて、聡一朗さんは背後を振り返った。
すると女性は急に笑顔になって、甘いという形容がぴったりの声で呼びかけた。
「先生、こんなところにいらしてたんですか? 英文学の書庫にご用事があったなんて、おっしゃってくだされば私がお手伝いしましたのに」
「紗英子君。仕事で来たんではないんだ。こちらの学生さんの勉強を少し協力していてね」
と、聡一朗さんは私を見やり、
「紹介しよう。学科の助手をしてくれている天田紗英子君だ。紗英子君、こちら竹咲美良さん。正式なうちの学生ではないんだが、英文学に興味があって独学しているんだ」
「まぁ、うちの学生ではないんですか? ……それは感心ですねぇ」
紗英子さんは笑顔を見せてくれるけど、目が笑っていない。
私が部外者と知ってなおさら疎ましさ感じたようで、早々と用件を切り出した。
「ゼミの学生が今度の発表のことで質問があるとのことでお待ちですよ。なんでも先生とお約束していたとか」
「ああそうだった。もうそんな時間か」
聡一朗さんは腕時計を一瞥すると、私を見やって、
「すまない、司書には言っておくから本はこのまま持っていくといい。また来週」
「あ、はい、ありがとうございました!」
ぺこりと頭を下げる私を残して、聡一朗さんは足早に書庫から出て行った。
すると女性は急に笑顔になって、甘いという形容がぴったりの声で呼びかけた。
「先生、こんなところにいらしてたんですか? 英文学の書庫にご用事があったなんて、おっしゃってくだされば私がお手伝いしましたのに」
「紗英子君。仕事で来たんではないんだ。こちらの学生さんの勉強を少し協力していてね」
と、聡一朗さんは私を見やり、
「紹介しよう。学科の助手をしてくれている天田紗英子君だ。紗英子君、こちら竹咲美良さん。正式なうちの学生ではないんだが、英文学に興味があって独学しているんだ」
「まぁ、うちの学生ではないんですか? ……それは感心ですねぇ」
紗英子さんは笑顔を見せてくれるけど、目が笑っていない。
私が部外者と知ってなおさら疎ましさ感じたようで、早々と用件を切り出した。
「ゼミの学生が今度の発表のことで質問があるとのことでお待ちですよ。なんでも先生とお約束していたとか」
「ああそうだった。もうそんな時間か」
聡一朗さんは腕時計を一瞥すると、私を見やって、
「すまない、司書には言っておくから本はこのまま持っていくといい。また来週」
「あ、はい、ありがとうございました!」
ぺこりと頭を下げる私を残して、聡一朗さんは足早に書庫から出て行った。