君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 墓所から出て駐車場に向かうと、こちらに駆け寄ってくる人がいた。

 ……あらら、どこに潜んでいたんだろう。

 「どこから湧いて出たんだ」と聡一朗さんも溜息まじりにつぶやく。

「でも手を合わせ終わった後に来たから、まだましな方か」

 私たちが立ち止まると、カメラを首からかけたその人物は、わざとらしいくらい明るい声で話しかけてきた。

「藤沢先生、ご結婚おめでとうございます! 今日は奥様とお出かけですか?」

 聡一朗さんが自身のSNSで結婚発表をしてから数週間経ったけれども、いまだにこうして追いかけまわしてくるメディアの人がいるからすごいと思う。
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