君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 なにを今さら悲しむんだろう。
 私たちに恋愛感情がないことくらい、最初から解っていたことじゃないか。

 別に聡一朗さんを失ったわけじゃない。
 私たちの奇妙な共同生活は、この先もずっと続くのに。

 私はそっと本棚に眠る絵本たちを撫でた。

 聡一朗さんと出会うきっかけになった絵本たち。
 両親の死から立ち直ることができて、好きだった絵本に、こうしてまたときめくこともできるようになった。

 ふと、自分も持っている絵本を見つけて、開いてみた。
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