君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 大好きなお話のひとつだった。
 孤児で誰からも愛されなくても、我が身を犠牲にして周りに愛を与えた少女のお話。
 感動して、こんな清らかな女性になりたいと思った。

 私は両親を失った悲しみから抜け出して、聡一朗さんのおかげでこうして自由に絵本を読めて、不自由なく暮らせている。

 なのに、これ以上の幸福を求めるなんて、いつの間にか私はなんて贅沢になっていたのだろう。

 なんだか、元気が出てきた気がする。
 どん底の悲しみを味わうと、人は強くなれるらしい。

 優しい微笑を浮かべて少女の頬をそっと撫でて、私は誓った。

 私は聡一朗さんのことが、今も、この先も好き。

 愛されなくてもいい。

 私がめいっぱいあの人を愛せれば、それだけでいい。






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