君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「おはよう。今朝も早いんだね」
「両親がいつも早起きだったから、朝は得意な方なんです。朝食、召し上がりますか?」

 キッチンには小鍋から湯気がのぼり、ダイニングテーブルには二人分の茶碗があった。

「今朝も作ってくれたのかい? すまない、今日も早朝から打ち合わせが入っているんだ」
「そうですか。今日もお忙しいんですね」

 うなずいて労わってくれるような微笑を浮かべる彼女に、ちくりと罪悪感を覚える。

 掃除洗濯はハウスキーパーに任せたものの、食事だけは作りますと彼女は申し出てくれた。

 俺は固く遠慮した。

 そんなことをさせるために君に妻になってもらったわけではない。
 それに仕事の都合で予定が急変することもあって、君に迷惑がかかるから、と説明した。

 それでも彼女は「作るのは私のわがままだと思ってください」と言って、こうして用意してくれている。

 俺が和食好きと聞いていたから、今朝もキッチンは味噌汁の良い香りがする。

 彼女くらいの歳の子は、パンやグラノーラが好きだろうに。
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