【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
***


「那智さん」


 その日は、生徒会室に向かう途中で裕くんに呼び止められた。

 いつも女子生徒に囲まれている裕くんとは中々一緒になることはなかったんだけど……。

 珍しいな、と思いながら振り返る。


「どうしたの? 今日は女の子たちと話さなくていいの?」


 初めに感じた印象通り、実は結構女好きだったらしい裕くん。

 生徒会の仕事があるときもいつもギリギリまで女の子たちと過ごしてるし。

 実は彼がヴァンパイアで、女の子たちをどこかに連れ込んで違反吸血しているのかもって調べたことがある。

 けれど、特に誰か一人を人気のない場所に連れ込むなんてことはなかったから今のところは保留状態。


 だいたい生徒会メンバーはみんな顔がいいから例外なく異性にモテる。

 女の子を(はべ)らせているからって理由だけじゃあヴァンパイアかどうかは分からなかった。


「そんな、人をいつも女の子を侍らせてるみたいに……」

「してないの?」

「……いや、してるね」


 否定しようとしたから問い返してみたら、少しだけ考えるような間を空けて肯定された。
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