【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
 それは、本当のこと?

 私、遊ばれてるの?

 ……ううん、今は私としかいないって言うなら遊ばれてるわけじゃないはず。


 そのことにホッとしたのも束の間、もう一つの可能性に気づき血の気が引いた。


 遊ばれているかどうかよりも、前まで女子をとっかえひっかえしてたってことの方が重要だよね?


 裕くんの言う通り女遊びという可能性もなくはない。

 でも、累さんはヴァンパイアだ。

 その女の子たちとは血を吸うために二人きりになったのかもしれない。


 ……モヤモヤと色んな感情が渦巻く中、私のハンターとしての冷静な部分が一つの可能性を語る。

 やっぱり違反者は累さんなんじゃないかって。

 累さんは他にもヴァンパイアがいると言っていたけれど、未だに私は他のヴァンパイアを見つけることが出来ていない。

 私に甘く迫ってきているのだって、私が累さんの“唯一”だからって理由だけだ。

 もしかしたらそれも嘘なのかもしれない。

 違反者として捕まらないために、ハンターである私を懐柔(かいじゅう)しようとしたのかも。


 ううん、そんなことない!


 累さんに恋する私はすぐに否定する。

 私に触れる優しい手、欲をちらつかせながら求めてくる翡翠の目。

 あれが嘘なわけないって。

 でも、冷静な声の方が説得力がある気がして……。

 ぐちゃぐちゃな気持ちはそのまま嵐のように荒れ狂いそうになった。


 でもそんな私に、裕くんが気遣うように声をかけてくれる。


「なあ、那智さん。良かったらもう少し詳しく話そうか?」


 その提案に私はすぐに頷く。

 もっと詳しく聞ければ、ハッキリさせることが出来るんじゃないかと期待して。


「うん、お願い裕くん」
< 23 / 30 >

この作品をシェア

pagetop