私とキミと、彼と
「本当に気にしないでください。
むしろもう感謝してもしきれないんで…」
そう言う私に彼は一瞬悩んだような表情を見せる。
そして自分の腕を私の方に差し出すと、捕まるよう促した。
「その靴で帰るわけにもいかないだろ。
…捕まって。とりあえずそこのベンチに座れる?」
「え、はい…。
…失礼します。」
片足しか使えない不安定な私を自分の方に抱き寄せ支えると、そっとベンチに座らせた。
この状況で近すぎる距離感に照れているのなんて、きっと私だけなんだろうな。
不思議…。初対面の人にここまで近づかれても嫌じゃないなんて。
照れて俯く私を他所に、彼は何やらポケットから取り出すと、それを私に渡した。