私とキミと、彼と





「本当に気にしないでください。

むしろもう感謝してもしきれないんで…」







そう言う私に彼は一瞬悩んだような表情を見せる。

そして自分の腕を私の方に差し出すと、捕まるよう促した。







「その靴で帰るわけにもいかないだろ。

…捕まって。とりあえずそこのベンチに座れる?」





「え、はい…。

…失礼します。」








片足しか使えない不安定な私を自分の方に抱き寄せ支えると、そっとベンチに座らせた。


この状況で近すぎる距離感に照れているのなんて、きっと私だけなんだろうな。

不思議…。初対面の人にここまで近づかれても嫌じゃないなんて。




照れて俯く私を他所に、彼は何やらポケットから取り出すと、それを私に渡した。






< 10 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop