私とキミと、彼と





「それ、俺のバイクの鍵。

少しの間ここで預かってて。」





「え…?なんで────…」





「──…すぐ戻るから。」







一方的にそう告げたまま、彼はどこかに走って行ってしまった。

片手に私の壊れた靴を抱えたまま…






え…っと…

ここで待ってろってことだよね?




バイクの鍵なんて、めちゃくちゃ大切なものを預けられてしまったし…

片っぽ靴ないし…


これは…大人しく待つしかなさそうだ。





まぁ、もともと友達と遊ぶ予定だったから、このあと特に予定もないし。


〝すぐ戻るから〟なんて言われても、明確に何分後かなんて分からないけど…

…とりあえず待ってみるか。



片足裸足でベンチに腰かける私に、行き交う人々は好奇の目を向けるけど…。





私は、名前も年齢もわからない彼のことをただひたすらと待っていた。







< 11 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop