私とキミと、彼と
「それ、俺のバイクの鍵。
少しの間ここで預かってて。」
「え…?なんで────…」
「──…すぐ戻るから。」
一方的にそう告げたまま、彼はどこかに走って行ってしまった。
片手に私の壊れた靴を抱えたまま…
え…っと…
ここで待ってろってことだよね?
バイクの鍵なんて、めちゃくちゃ大切なものを預けられてしまったし…
片っぽ靴ないし…
これは…大人しく待つしかなさそうだ。
まぁ、もともと友達と遊ぶ予定だったから、このあと特に予定もないし。
〝すぐ戻るから〟なんて言われても、明確に何分後かなんて分からないけど…
…とりあえず待ってみるか。
片足裸足でベンチに腰かける私に、行き交う人々は好奇の目を向けるけど…。
私は、名前も年齢もわからない彼のことをただひたすらと待っていた。