私とキミと、彼と
「…あ、そうだ!お金!
靴、買ってきてくださって本当に助かりました。いくらでしたか?」
私が履いてきた靴より高そうだけど…
5000円で足りるかな…?
「…いや、いらないから。
弁償するって言っただろ?」
私が財布を出そうとすると、彼はそれを手で制した。
「だめですよ!
私の靴なので私が払います!」
「いいえ、受け取りません。
壊した俺が弁償するのが筋でしょ。」
「違います!私が────…」
「いや、俺が────…」
どちらも一歩も引かない攻防戦が繰り広げられる。
〝俺が壊したから〟なんて言うけど、あの靴はきっと私が自力で抜いたとしても壊れていただろう。
転びそうになったところを助けてもらって、靴も取り出してもらって…
その上新しい靴まで買ってもらうなんて…
そんなの、私の良心が許さない。