私とキミと、彼と
「…りょ、凌哉くん…。」
私が発した声は、自分が想像していたよりもはるかに小さいもの。
だけど、彼の耳にはしっかり届いていたようで…
私の声が聞こえるなり、彼は目を開け嬉しそうに笑った。
「上出来じゃん。
…ってか、顔赤すぎ。」
「…言わないでください。」
言われなくても、自分の顔が熱を帯びていることくらい分かる。
なんか悔しいな。余裕そうに笑っちゃってさ。
「…俺にも教えてよ、名前。」
「… 望月千夏(モチヅキ チナツ)、です。」
「よろしく、千夏。」
名前を呼び合うだけでドキドキしたり…
自分の名前が特別なものになったような気がしたり…
…私、この感覚を知ってる。
約1年ぶりに感じた気持ちだった。
「あの…連絡先聞いてもいいですか?」
「うん。俺も同じこと思ってた。
…また、千夏に会いたい。」