私とキミと、彼と
彼の手に誘導されて、私の腕は抱きつくような形で彼の腰に回った。
服の上からでも分かる筋肉の厚み。
「さっき言うタイミング逃したけど…
……その服、似合ってる。可愛い。」
エンジン音にかき消されそうな声だったけど、私の耳にはしっかりと届いた。
「…えー、何?
聞こえなかったから、もう1回…」
「もう言ってやんねーし。
…ほら、出発するから。」
あえて聞こえないフリをして聞き返す私に、彼はいつもよりつれない態度でそう言った。
背中を向けてるし、フルフェイスのヘルメットを被っているから顔色はよく見えないけど…
密着した身体から伝わる彼の体温は、少しだけ熱い気がした。
あぁ…なんか、もう。
愛おしいなぁ…。
「…凌哉くん、好き。」
「え、何?
聞こえなかった。」
「2回は言ってあげなーい。」