私とキミと、彼と
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「千夏。着いたよ。」
バイクが停車し、先に降りた彼が私に手を差し伸べる。
彼の手を取りバイクから飛び降りると、彼は慣れた手つきでヘルメットを脱がせてくれた。
それにより視界が良好になり、私は辺りを見渡してみる。
ここが凌哉くんの実家……なわけがない。
ほとんど車通りのないだだっ広い道の脇に、古い廃工場のような建物がいくつか見える。
想像とはあまりにも違うその風景に、私は動揺を隠せない。
「あの…凌哉くん。ここって…」
コンクリートの建物は、少し冷たい雰囲気で…
怖くて彼の服の裾をギュッと掴むと、それに気づいた彼はその手を取り優しく握ってくれた。
大好きな彼と繋がれた手が、唯一の安心材料になる。