私とキミと、彼と
─────カキンッ…
金属の擦れるような音が聞こえたと思えば、踏み出すはずの左足が思うよう上がらず…
前に踏み出せなかった下半身に対して、上半身は前のめりになる。
「わっ…!」
やばい、これ。
このまま転けちゃうやつだ。
これから訪れるであろう衝撃に備えて目をギュッと瞑った。
しかし、数秒経っても痛みは訪れない。
その代わりに私を包んだのは、少し高い体温と甘い香水の香りだった。
「…ビビったぁ…。大丈夫か?」
頭上から降ってきた低い声に慌てて顔を上げると、心配そうにこちらを見つめる男性と目が合った。
うわ、かっこいい…
…じゃなくて!