私とキミと、彼と
初恋の記憶
風間恭平と初めて言葉を交わしたのは、中学一年生の5月。
入学して初めての席替えで、隣の席になったのが彼だった。
「…隣、望月さんなんだ。
よろしく。」
「よろしくね。」
「話すの、初めてだよね。
俺の名前は──……」
「…風間くんでしょ?」
被せるようにそう言うと、彼は少し驚いたように目を見開いた。
私が彼の名前を知っていたことが、そんなにも驚くべきことだったのだろうか。
君だって、話したこともない私の名前を知っていてくれたのにね。
…まぁ、私が人の名前を覚えるのが苦手なことも事実なんだけど…。
そんなことを彼が知るはずもない。