私とキミと、彼と
「ご、ごめんなさい!」
彼に抱きとめられていた状況をようやく理解し、慌てて距離をとる。
…しかし、後ろに後退ろうとしたところでまた左足が思うように上がらず、今度は後ろにバランスを崩してしまった。
「ぅわ…!」
「あぶなっ!」
一瞬死を覚悟したけど、目の前の彼が腕を引いてくれたおかげで、私は再び彼の胸に収まった。
「ほんっと……心臓に悪い。」
「ごめんなさいごめんなさいっ!
なんか…左足、動かなくて…」
「左足?」
その言葉に、彼は私の足元を覗いた。
「あーあ、ハマってる。」
どうやら、パンプスのヒールが溝蓋の隙間にハマってしまったようだ。
なるほど…それで思うように歩けなかったのか。