私とキミと、彼と
「抜けそう?
ほら、肩貸してやるから思い切り踏ん張れ。」
「ありがとうございます。…が、頑張ります。」
彼のたくましい肩にそっと手を添えて、吐く息と同時に足に力を入れる。
頑張って引き抜こうとするけど、ビクともしない。
ヒールが抜ける前に靴が脱げてしまう。
「…す、すみません。
もう1回頑張りますっ…!」
もう一度靴を履き直して再チャレンジするも、全く抜ける気配は無い。
「まじか。こんなに抜けないこともあるんだな。
…あんた、どんだけ力強く地面踏みしめてたの?」
「んなっ!?違いますよっ!
たぶんあれですっ!…〝シンデレラフィット〟ってやつ!」
「ふはっ!
何も嬉しくねぇシンデレラフィットだな。」
彼の無邪気な笑顔に、思わず胸がキュンと鳴る。
一見クールそうに見えるのに、すごく楽しそうに笑う人なんだな。
初対面なのに壁を作らない彼の振る舞いに心地良さを感じたけど、これ以上見ず知らずの彼を足止めするわけにはいかない。