私とキミと、彼と
「…きょんちゃん、ごめっ───…」
すぐに謝ろうと顔を上げると…
今にも泣き出しそうな彼の表情に、胸が抉られるように痛んだ。
真っ赤に充血した瞳に涙を溜めて、それでも無理やり笑顔を作る彼。
そんな彼から出てきた言葉は、あの選手に対する恨みでも、無神経な私への怒りでもなかった。
「…せっかく応援に来てくれたのに、
かっこ悪いところ見せてごめん。」
震える声で冗談っぽく言って見せる。
今彼にこんな顔させているのは、あの選手なんかじゃなくて…
紛れもなく私だ。
「かっこ悪いなんて…っ…
…そんなこと、思うわけないよ…。」
「…うん。」
今でも時々思い出す。
あの時もし、もっと気の利いた言葉を言えていたら…
あんな無神経な事を言わなかったら…
…彼が立ち直れるまで、そっとしてあげていたら…
そんなことをいくら考えたって、今更遅いんだけど。