私とキミと、彼と
「……花村?」
遠慮気味に彼の名前を呼ぶと、彼は昭和の古臭いコントのようにあからさまにズッコケる。
隣にいる春陽さんも、凌哉くんも楽しそうに笑っていた。
「…なっんでだよッ!」
「え…だって〝呼び捨てで〟って言ったから…」
「今の流れだったら、普通〝璃汰〟だろ!?
〝花村〟なんて…センコー以外で呼ばれたことねぇから、なんかゾワッとした!」
…いや、私にとっての普通とあなたにとっての普通はちがうわけで…
男の人を下の名前で呼び捨てにするだなんて、私はそんなの慣れていないし…。
…でもまぁ、この人なら呼び捨てで呼ぶことにもあまり違和感がないかも。
なんというか…〝異性〟って感じもしないし…
「…わかったよ。じゃあ、〝璃汰〟で。」
「おう!よろしく、なっつん!」
要望通りそう呼ぶ私に、彼は嬉しそうに笑って握手を求めた。
私も差し出された手にそっと自分の手を重ねる。
カシスピンクの髪色が彼の明るさを全面に表しているようだ。