私とキミと、彼と
「はい。
…ていうことで、うちの彼女をよろしくー。」
肩を抱き寄せニッと笑って見せた凌哉くんの隣で、私は改めてもう一度頭を下げた。
「千夏さん、どうすか?
名前覚られそう?」
「もうっ。すぐに人をバカにするんだから!
3人くらい余裕ですー。」
「よし、じゃあテストな?
左から順番に名前呼んでみて。」
「璃汰!春陽さん!きょんちゃん!」
私から見て左側にいる璃汰から順番に、手で1人ずつ指して名前を呼んでいく。
そんな私に、凌哉くんは大袈裟なくらいの拍手をして…
「すご!千夏、天才!
3人も名前覚えて…えらいなぁ!」
「ちょっと凌哉くん!
バカにしてるでしょ!」
「失礼な。
めちゃくちゃ尊敬してるわ。」
むくれる私の頭をわしゃわしゃと撫で回す凌哉くん。
わざと怒ったフリなんてしてみるけど、本当はこの大きくて優しい手が大好き。
好きだよ、凌哉くん…。
本当に誰よりも大好き。
僅かに生まれた彼への罪悪感から目を背けるように、心の中で何度も繰り返した。