私とキミと、彼と
「…あのなぁ……。
俺こう見えても、今めちゃくちゃ我慢してんの。
理性と必死に戦ってんの。」
「我慢なんて───…」
〝しなくていいよ〟
そう言おうとした時、彼はそれを遮るように私の頭を乱雑に撫でた。
彼な大きな手によって前髪は乱され、視界は悪くなる。
「……わっ…ちょっと、凌哉くん────…」
「───…無理に急がなくてもいいよ。
千夏の心の準備ができるまで待つから。」
彼のその言葉に、それまでフワフワとしていた気持ちが落ち着いていくような気がした。
…私、焦ってたのかな?
思わぬ人との再会で、たしかに少し不安はあったのかもしれない。
私自身も気づいていなかった迷いや不安を、いとも簡単に見抜いてしまうのだから…
本当に凌哉くんにはかなわないや。