私とキミと、彼と
「…ダメだった?」
「ダメではないけど…
…千夏サン、なかなか鬼畜っすね。」
珍しく動揺した様子の彼は、誤魔化すようにわざとおどけた口調で言う。
声色からして嫌がっているわけではなさそうだけど…
さすがに密室で抱きつくのはまずかったのかな…?
「ごめんね。
どうしてもくっつきたくて…。」
念の為謝っておくと、彼は盛大なため息をつく。
…あ、やっぱり嫌だったのかも…。
そう思いすぐさま離れようとするけど…
彼はそんな私の腕を強引に引き寄せ、逃がさまいと強く抱き締めた。
「…んな可愛いこと言われたら、男として我慢するしかなくなるでしょーが。」
私の肩に頭をグリグリと押し付け、腰に回された腕にもより力がこもる。
顔は見えないけど、少し視線をずらした時に目に入った彼の耳は、ほんの少しだけ赤かった。
何これ…。可愛すぎるんですけど…。
自分の彼氏の可愛さに悶絶して、彼の柔らかい髪をそっと撫でたのも束の間だった────…