私とキミと、彼と
私が承諾すると、彼はその大きな手で私の靴を掴んだ。
そして一気に力を込めて腕を引くと、いとも簡単に抜けてしまった。
「わ…すごい…。
ありがとうございます!助かりました。」
「取れてよかった。
気をつけて帰って…て、あれ?」
「…どうしたんですか?」
手に持っていた靴を見るなり固まった彼。
私もその靴を覗き込むと、ヒールの部分が靴底から剥がれていた。
「まじか…本当にごめん。弁償させて。」
「えっ!そんな…いいですよ!
もう十分すぎるくらい助けて頂いたので。」
弁償だなんて…
この靴、3年前の夏に2000円くらいで買った安物だし。
古い上に安物だから靴底も剥がれてしまったんだろうし…
それに…あのままだったら、私はずっとこの場所に留まることになっていた。
これ以上助けてもらうのはさすがに申し訳ない。